自然豊かな環境で のびのびと学んだことが、今につながる僕の原点です

中学時代の初海外体験で、英語への興味が高まった

 

高校留学を考えたのは、中学３年生のときにオーストラリアへの10日間の短期留学を経験したことがきっかけです。僕が住んでいた自治体が実施するプログラムだったのですが、学校経由の公募に応募したのは女子ばかり。
「なんだ男子はいないのか」と担任の先生が言うのを聞いて、その場の勢いで「はい」と手を挙げたら派遣生に選ばれたという経緯です（ 笑）。そうして初めて訪れた海外で、現地の人たちは英語ができない僕にとても親切にしてくれました。でも、僕はお礼の気持ちをうまく伝えることができなかった。
英語をもっと勉強して、海外の人と話せるようになりたい。そして世界をもっと見てみたい。そう感じたことが、次の留学へとつながったんです。

 

１年の留学のつもりが本格的な正規留学に

 

高校留学も、当初は１年間の留学の予定でした。進学した都立高校を２年生のときに休学し、ニュージーランド・ティマル市のロンカリカレッジへ。中学時代に行ったオーストラリアに近い国だということ、そして自然が豊かだということがニュージーランドを選んだ理由です。ホームステイ先も田舎を希望し、高校からスクールバスで40分ほど離れた内陸の町へ。動物が好きで将来は獣医になりたいと考えていたこともあり、シープファーム（ 羊牧場）を営む家庭にステイしました。
1600頭の羊を飼う広大な牧場で、見渡す限りでっかい空と地平線が続く景色。生まれ育った東京とはまったく違う世界で、見るもの食べるもの聞くものすべてが新鮮でした。

ただ、環境は一目で気に入ったものの、学校生活は最初はやはり大変でしたね。ニュージーランドの高校は日本と違って、履修科目は選択制。授業ごとに教室を移動するのですが、まず、自分の授業がどこで開かれているのかわからない。無事教室にたどり着いても、今度は教科書のどこの話をしているのかわからない。言葉の壁には苦労しました。友だちとの会話も、最初は聞き取れなくてもあいまいに笑ってやりすごしていたんです。それが１年経つころには、「今何て言ったの？ 」「それはなぜ？」と自分から質問している僕がいて、ああ、話せるようになってきたんだなと。するともっと英語を学びたいと思うようになり、両親を説得して都立高校を中退し、ロンカリカレッジでの卒業を目指しました。

 

生徒の関心を大切にする教育で進路選択の視野が広がった

 

ニュージーランドでの毎日は刺激的でした。隣の家ははるか彼方にかすかに見えるくらい遠いのに、人と人の距離がとても近いんです。近所の人が集まるバーベキューパーティーが頻繁に開かれ、みんな自分の趣味を持っていて話題も豊富。ゆるやかに流れる時間の中で暮らしを豊かに楽しむ、生き方上手な人が多いというのがニュージーランドの印象です。

高校の授業も一方的な講義形式は少なく、「君はどう思う？ 」と生徒の発言を促す参加型のスタイル。その内容も受験対策的なものではなく、学ぶこと自体を楽しむようなものでした。進路指導も偏差値重視ではなく、生徒の興味関心ややりたいことを大切にしてくれます。僕は、日本の大学の獣医学部に進むことを考えていましたが、高校の先生から「動物に関わる仕事は獣医だけではないよ。動物学や生態学、環境保全学など関連分野を幅広く学んではどうか」とアドバイスを受けたんです。こうした分野の研究ではニュージーランドは先進国です。そこで、ニュージーランド最大のマッセー大学に進んで動物学と生態学を専攻。卒業後はタイでの生物保全の研究にアシスタントとして参加しました。その後、日本に帰国して研究活動を支援する企業に勤務し、再び海外に出てコスタリカの平和大学の大学院での修士号取得を経て、現在に至ります。

 

僕が関わっているのは、人と自然が共生する社会を実現する取り組み。その理想形の一つとして、日本の里山が、「SATOYAMA」として海外から注目されています。実は世界各地にも日本の里山に似た、人と自然の共生実現のヒントとなる地域が多くあります。
その事例を集め、知識や知恵に変えて世界の人々と共有し、次の世代に手渡すことが活動のテーマ。すぐ結果がでる仕事ではありませんが、使命とやりがいを感じています。