~編集長インタビュー~ どこでも活躍できる人材を育てる 全員参加の必修ニュージーランド留学

公開:2019-06-24 更新:2019/07/30

東京成徳中高一貫部は、グローバルに活躍できる人材を育てるため、今年度から中高6年教育の3年次に、1学期間のニュージーランド留学を必修化し、教育計画の中枢に据えました。
「21世紀のグローバル社会に活躍できる人物の育成」という大きな目標に向けて舵を切った同校の国際交流部長の茂原教諭と英語科の和田教諭に話を伺いました。

東京成徳

※国際交流部長の茂原教諭(右)と英語科の和田教諭(左)

中学3年生全員が3か月親元を離れて暮らす自立体験

天野:留学コースがある高校は増えてきていますが、中学生で全員留学をするというのはあまり前例がないと思うのですが、今回なぜ留学を全員必修化にしたのでしょうか?

 

茂原:ニュージーランド留学は17年前から実施していて、昨年までは選択制で希望者のみが留学に行っていました。しかし、留学に行きたい子が多く、昨年では3年生130人中72人が参加しましたように、年々希望者も増加しており、留学がもたらす教育効果の高さから、全員留学の実施に踏み切りました。

全員留学にすることで、中学校1年生で入学した時から、2年後の留学に向けて準備ができるので、本校の目指す目標に向かって6年間のしっかりとした教育計画が作れるようになったのです。

中学校3年生の3学期は通常受験の期間なのですが、当校は中高一貫校なので3年生の3学期をそのまま留学に使えるという大きなメリットがあります。

 

天野:留学先にニュージーランドを選んだ理由は?

 

茂原:環境がすごく良いからです。現在はニュージーランドの首都ウェリントンと、最大都市のオークランドの2都市の近郊に留学させています。

1校につき3名までという人数制限を設けているので、同じ学校に日本人の友達で溢れるようなことが無いように設計されています。

 

東京成徳

※今年度から3年次に全員1学期間NZ留学へ

 

和田:前回ニュージーランドに行った際に、現地の小学校を視察させてもらって衝撃を受けました。クラスを分ける壁が無く、みんなが自由に好きなところに座ったりしていますし、はだしの子もいたりで、パッと見は学級崩壊が起きているようでした。しかし、実は先生達は生徒一人ひとりのことを毎時間ものすごくきめ細やかに見ていたんです。

学年ごとにクラスを分けるのではなく、個々の生徒の習熟度に合わせて、10名程度のグループが作られているので、同じくらいの習熟度の子同士が学べるようになっていました。

例えば算数が得意な子は年上の子たちと一緒に算数をやっている。さらに同じ教科でも「この子はこの計算式はできているけどこの計算はまだできない」という風に、きめ細やかに子供たちの習熟度がチェックされていて共有されているのです。

テストで習熟度を定点観測する日本の現場との違いに大きな衝撃を受けました。

 

天野:100名もの生徒を毎年留学に送り出すというのは凄いことですが、留学の一番の魅力は?

 

茂原:自立体験だと思います。英語ももちろん学べますが、実際に親御さんのお話を聞いても「この子に親元を離れる苦労を体験して欲しい」という方も多くいらっしゃいますが、15歳の子供が海外に行って、ホームステイで他人の家で3カ月暮らすというのは強烈な体験です。

15歳が3カ月の留学を経験すると、本当に見違えるようになって帰ってきますよ。

 

自己肯定感の持てる子を育てるための成功体験

天野:3年次の留学を中心に6年間の教育が組み立てられていますが、具体的には御校ではどのような授業や活動などを実施されているのでしょうか?

 

和田:グローバル化の進む未来に生きる上で必要とされる、価値観や人間性、思考習慣、コミュニケーションや情報処理のスキル等の多岐にまたがる力を東京成徳ビジョン100という本校独自の教育目標から「伸ばす学力」、「伸ばすグローバル力」、「伸ばす人間力」として、その達成を目標としています。
そのために数多くの活動を行っています。いくつか例を挙げると、

 

1.アップルの新しい教育カリキュラム「エブリワン・キャン・クリエイト(Everyone Can Create)」

本校はアップル社から学習、指導、継続的なイノベーションに取り組む学校であることが認められApple Distinguished Schoolの認定を受けています。Everyone Can Createというカリキュラムでは、ビデオや写真、音楽やスケッチなど、クリエイティブな表現を既存の教科の中に取り入れる活動を行っています。ただ歴史の年号を覚えたり、英単語を覚えるのではなく、自分で考え、自分なりの表現でアウトプットすることで、楽しみながら多くの学びを得ているのです。

 

東京成徳

※歴史の人物紹介をチラシ風のデザインにしたり、歴史上の人物になりきってインタビュー撮影を行うなど、教科をまたいでクリエイティブな活動を行っている。

 

東京成徳

※英語のオリジナルのストーリーを作り、それをスケッチと1語で表現する

 

2.体験学習を通じて「命を頂く」ことを知る

毎年夏に、長野県の戸隠で5日間のキャンプを実施しているのですが、そこでは魚を手づかみし、その魚を捌き、焼いてからみんなで頂く活動を必ず行います。
こども達の中には魚を触ることすらできないような子たちもいますが、実際に生きている魚に触れ、その魚を調理して食べる。当たり前のことですが、実際に生きている生き物が、どこかのタイミングで食べ物になる。それを目の当たりにすることで生徒たちの「生命」に関する考え、「食」に関する考えが大きく変わるのが見られます。

 

東京成徳

※魚の手づかみ体験で、生き物の命を頂くことを知る

 

3.見たものを英語で伝える

What do you see?  What do you think?  What do you wonder?
写真をみて、何が見えるかだけでなく、その構図にはどういった背景やストーリーがあるのかを考えて表現する。この活動では、写真一枚の情報から「何が見えて」「これは何を表していて」「それはきっとこんな背景がある」といった推測する力や情報を要約する力を伸ばす効果があります。

 

東京成徳

※この写真は何? どう思う?  (オークランド空港の自動チェックイン機の写真)

 

4.辞書に触れる

「教えない授業」の山本崇雄先生から教わったことですが「辞書に付箋を貼る」という活動を私も実施しています。本当にただ自分の知っている単語をみつけて付箋を貼るだけで、紙の辞書に触れる。という活動を何度も行うと、生徒自ら辞書を使って知らない単語を調べ始めます。

当校は全員にiPadを配布しているので、iPadも使えるのですが、時と場合によって生徒が使いやすい方を選んで使うようになるのです。現代の生徒は紙の辞書なんて使わないと思って、最初から辞書を使わせない学校も多いかもしれませんが、ちゃんと触れさせてあげて生徒自身にどれを使いたいか選ばせてあげると、生徒の学びの幅も広がると思います。

 

東京成徳

※紙の辞書にどんどんと付箋を貼っていくことで、辞書に触れることができる

 

天野:クリエイティブな活動と合わせることで、様々な教科の授業がすごく楽しい活動になりますね!他にも今後実施を考えている活動などはあるのでしょうか?

 

和田:今の時代、テクノロジーを使って面白い活動がたくさんできるので、私はテクノロジーをうまく使って、子供たちが将来グローバルに活躍できるように、たくさんの学びを得られる環境を作っていきたいです。

 

天野:今年度から始まる全員留学も楽しみですね!貴重なお話ありがとうございました。

 

(取材日: 2019年6月21日)

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