留学の低年齢化が進む、韓国の英語教育事情

公開:2020-10-07 更新:2020/10/07

韓国幼児英語事情画像1

日本にとって、とても身近な国、韓国。距離も近く、同じアジア人ということで比較されることも多い日本と韓国ですが、英語教育に関しては、韓国が大きくリードしているのが現状です。特に幼少期における英語学習に関しては韓国が圧倒的に先を行っています。

今回は、おとなり韓国の英語教育事情についてご紹介します。

英語は小学校3年生から必修科目

ようやく今年度から日本の小学校でも3年生から英語の授業が行われます。3~4年生は「外国語活動」というカリキュラムとして、担任の先生がALT(外国語指導助手)などと一緒に年間で35時間、週に1~2回授業を受けます。そして5~6年生になると年間で70時間、週に3回程度の授業数になり、ようやく「外国語」という「教科」となります。小5の息子に聞いたところ、4年生の頃(2019)は月に1度のみだったのが、5年生になってから(2020)は、週に2回に増えたそうです。

それでは韓国ではどうでしょう。韓国では2012年から3~4年生では週2時間、5~6年生で週3時間授業が行われていました。日本より8年も前から必修科目となり、その上授業時間数も多くなっています。また、授業はネイティブ講師によって行われ、単に習うという受け身の授業ではなく、プレゼンテーションやディベート形式が多く取り入れられています。これは日本でも徐々に取り入れられてきていますが、韓国では早いうちから自分の意見や考えを英語で伝えるということを重視した教育が行われています。

留学は幼稚園、小学校のうちに

学校での英語学習については先に書いた通りですが、各家庭における「習い事」としての英語教育はどうでしょう。習い事は早いうちからはじめると、身につきやすいとはよく言われますが、特に語学に関しては「英語耳」「英語脳」を鍛えるために早期学習が望ましいとされています。韓国はまさに、この早期学習において日本よりはるかに先をいっています。なんと小・中学留学する人数が、高校や大学で留学を経験する人の数を上回っているのです。(韓国教育開発院による統計)

小学生などが留学する場合、海外のボーディングスクール(寄宿学校)に入学するという選択肢があります。しかしこれは費用が高額になるので、ごく限られた富裕層にしかできない選択です。そのため他の方法としては、母親が一緒に渡航しアパートなどで生活しながら子供は現地の学校へ通うということがあります。父親は韓国に残り働き、母子で渡航し子どもの留学生活を母親がサポートするのです。父親は淋しいでしょうが、子どものためと頑張るのでしょう。

また、フィリピンには韓国人のために作られた語学学校が多くあり、生活習慣や食事のメニューなども韓国人にとって過ごしやすくなっています。そのためこのような語学学校に親子で通うケースもあります。留学中も環境の変化の少ない学校であれば英語の勉強に集中できます。韓国系の語学学校は「スパルタ式」を採用しているところがほとんどで、

・1日10時間以上の学習
・平日は外出禁止
・頻繁にテストが行われる
・自習時間が必修で設けられている

など厳しいルールが学生には課せられ、マンツーマンのレッスンやグループレッスンで英語を学んでいきます。中には小学生専門の語学学校もあり、スタッフが留学生に付き添い学校まで引率します。そのため韓国からは多くの小学生が、親なしで留学が可能なのです。小学生の留学生者数が多い韓国だからこそできる留学と言えますね。

学歴によってその後の人生が決まってしまうほど韓国の大学受験が熾烈なのは有名です。その大学受験に支障がない小・中学生のうちに留学を経験し英語を学ぶ方がよいと考えられている韓国ならではの留学方式かもしれません。

しかし留学にはやはりお金がかかりますので、すべての人が実現できるというわけではありません。では早期英語教育を子どもにさせたい韓国の親は、どのように英語を学ばせているのでしょう。幼児期における教育方法をご紹介します。

熱心に行われる幼児英語教育

韓国幼児英語事情画像3

日本では「保育園」は厚生労働省、「幼稚園」は文部科学省、「認定こども園」は内閣府というように、管轄するところが異なりますが、韓国も「保育施設」と「幼稚園」では管轄するところが異なります。また、韓国の場合それら保育所や幼稚園以外に「ハゴン(幼児教室)」や宗教施設で就学前を過ごす幼児もいます。ハゴンは「学院」という意味で、英語学院、美術学院、教育学院などさまざまあり、午前と午後で異なるハゴンへ通ったりします。

それぞれ特色がありますが、英語に力を入れているところも多く、英語教育に熱心で裕福な家庭は、幼稚園(3~5歳)に入園する前に英語に力を入れている保育施設へ1年間通わせ、英語を学ばせます。その後英語幼稚園へ進み、ネイティブ講師と一緒に日々の生活や遊びを通し、活きた英語を学ぶのです。普通の幼稚園の10倍にもなる費用を払って通わせるというだけあり、少人数制で無理なくしっかりと英語が身につきます。しかし、費用がかかるため英語幼稚園は庶民にとって一般的とは言えません。

では、多くの人はどのように子どもたちに英語教育を受けさせているのでしょうか。英語教育の必要性は富裕層の家庭だけではなく一般家庭でもとても重要とされています。英語学院へ通わせることももちろんできますが、月謝が月に3万円以上のところも多く、家庭でできるICTを活用したスマート英語教育が人気です。近年日本でもICTを活用した家庭学習を安く提供する企業が増えてきましたが、韓国ではタブレットなどを活用した幼児教育が以前から活発に行われています。タブレットやPC、スマホ以外にもスマートTVという、学習用のテレビを家庭に設置し、音声で操作できる機能を活用し、すでに入っている教育用アプリを使用し学んでいくという方法もあります。

普段からPCやスマホを操作している親世代も、オンライン学習に対する抵抗感がありません。家の壁に貼られていたハングルやアルファベット、数字のポスターも今はタブレットにアプリをインストールし画面上でインタラクティブに学習するようになりました。乳幼児の好むキャラクターが楽しく学習をサポートしてくれます。教育全般に熱心な韓国ですが、英語学習においては特に、子どもが小さいうちからはじめる親が多いようです。

 

★日本でも、タブレット内の2Dキャラクターではなく、AR機能と併せてかわいいぬいぐるみと会話をしながら英語を学ぶことができる教材をアルクが販売しています。
詳しくは下記サイトをご確認ください。

日本と韓国の差

日本で1番多く留学するのは大学生で10万5,301人。次いで高校生の約4万7,000人(ともに2017年度)です。しかし、はじめにも書きましたが、韓国では小中留学が活発で、日本とは異なり高校や大学で留学する人数を上回っています。

TOEFL iBT®Test and Score Data Summary 2019によると、アジア29カ国でみた2019年のTOEFL iBT平均スコアは、120満点中シンガポールが1位で98、次いでインド95、パキスタン94、マレーシア91となっています。同じ平均スコアの国が複数あるため、順位は1位から18位となりますが、韓国は北朝鮮、マカオ、台湾と並び83で9位。台湾は英語が公用語なので、その国に並ぶということはすごいことです。日本のスコアは72で16位。各国で受験者の層に違いがあり、単純比較は難しいかもしれませんが、過去20年間ずっとかわらず順位は下の方にとどまっています。

中学校での英語学習時間は韓国より日本の方が多いため、学習時間の問題ではなく、その質や、はじめる年齢が英語力の習得に関係があるのではないでしょうか。国を挙げて英語教育にいち早く取り組んだ韓国と日本との差は、すぐには追いつけないほど広がっています。しかし、国が何かしてくれるのを待っているのでは何も変わりません。この現実を知り、子どもに英語力をつけたいのであれば、個人でできるものを見つけていく必要がありそうです。

 

※参考サイト

文部科学省 外国語教育:https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/index.htm

TOEFL iBT®Test and Score Data Summary 2019:https://www.ets.org/s/toefl/pdf/94227_unlweb.pdf

この記事を書いた人

「あの国で留学」の編集チームは全員が留学経験者。留学会社に勤務し実際に留学を希望する人のカウンセリングを行ったメンバーもいます。留学へ行きたいと希望する人の気持ちもわかり、実際に行った経験からどんな情報があったらいいかも熟知しています。留学を希望するすべての方に役立つ情報を発信していきます!

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