公開:2019-06-18 更新:2019/07/30
「教えない授業」で多くの生徒の学力を伸ばしてきた山本崇雄先生。ユニークなのは授業のやり方だけでなく、本人の働き方も未来志向でユニーク。
現在、新渡戸文化学園 英語科教員、横浜創英中学・高等学校 教育アドバイザー、アルクテラス株式会社 コミュニティデザイナー など複数の組織で幅広く活躍している山本先生に話を伺いました。
天野:「なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか(日経BP)」や、「教えない授業の始め方(アルク)」などの本が話題を呼んでいますが、「教えない授業」を実践するキッカケはあったのでしょうか?
山本:私が今のスタイルにたどり着くまでに大きく2つのキッカケがありました。
1.震災
2011年の震災の後、家族と離れるなど、様々な困難な状況に置かれた子どもたちが、困難を乗り越えて自立していく姿を見て、彼らの持つ自立への強さを知りました。
それまで私はわからないことは丁寧に教えてあげることが良いと考えていたので、わからない文法があったらその文法についてしっかりと生徒に教えてあげていました。しかしそれは勝手に生徒の前にレールを敷いてしまい、生徒が発見する喜びと自立へのチャンスを奪っていたと気付いたのです。
2.英国ケンブリッジ大学での学び
震災の年の夏に、ケンブリッジ大学にTESOL(英語教授法)を学びに行きました。そこでも私の教え方について「教えすぎ」と指摘をされたのです。
そして私は段々と「教えない」という授業スタイルに変えていったところ、子どもたちの反応も変わり「授業が楽しい!」に繋がっているのがわかりました。
天野:具体的にはどのような活動をしているのでしょうか?
山本:目標を明確にしてあげることです。英語はあくまでツールなのに、ツールの使い方ばかりおしえても、それを使うことでどういうことができるのか? さらには何をしたいのか?という目標が無いと楽しくないですよね。
例えばトンカチに例えると、トンカチの使い方だけ教わるより「トンカチを使って何を作りたい?」と、作りたいものを生徒から自発的に引き出すんです。そうすると、自分の作りたいものを作るためにツールの使い方を学ぶ必要があることに気づく。
なので、中1の授業ではまず英語を学んで何がしたいか?という目標を見つけさせることをしつこいくらいに行います。海外旅行がしたいでも、外国の友達を作りたいでも何でも良いので、目標を見つけることが重要です。
「外国の友達を作りたいならまず自己紹介をしないといけないよね。教科書の中から自己紹介の表現を探して、ベストな自己紹介を考えてみよう」というと、みんな教科書に載っている単語や表現を使って文章を作り始めます。やらされている授業と違って、自発的にやっているので次々「これをやりたい!」「もっとやりたい」が増えていきます。
たまたまインタビューの時に居合わせた中学校1年生の女子生徒にも山本先生の授業について話を聞いてみました。
天野:山本先生の英語授業は楽しいですか?
生徒:すごく楽しいです!小学校1年生から英語の授業がありましたが、発音とか単語とかを習う感じであまり楽しいと感じたことが無かったのですが、山本先生の場合は私たちが「何をやりたい?何を話したい?」を優先してくれるので、授業が楽しいです。
天野:今、英語を使ってやりたい事はありますか?
生徒:今、学校でSDGs(持続可能な開発目標)について学んでいるのですが、SDGsの本を英訳して出版したいです。
それと、SDGsのゲームアプリを開発して、ゲームを通してSDGsを学べるようなものを作りたいと考えてます。
天野:中学校1年生でそんなに具体的にやりたい事があって、実現しようとしているのはすごいですね!
生徒:楽天の方が授業に来て下さる機会があって、私たちのやりたいこともサポートしてくださると言っていたので、色んなことにチャレンジしたいです!
天野:山本先生は、今まで勤めていた学校を辞めて、現在は複数の学校や企業でお仕事をされていますが、実際このような働き方を始めてみてどうですか?
山本:複数の学校や組織に関わることで、自分自身や学校全体のことを俯瞰して見られるようになったことはすごく大きいと思っています。それこそ、現在私が関わっている、新渡戸文化学園と横浜創英中高の2校をとっても、規模感や文化も異なる学校なので、様々な気付きを得ることができます。
天野:日本では少子化も進んでいきますが、世界的にみても、教育のオンライン化が進んだりしているので、働き方も含めて教育現場も変わっていかなければいけないですよね。
山本:客観的に教育現場を見て、本当に学校は変わらないといけないと強く感じています。学年やクラスごとに同じことをやるのではなく、学年やクラスの枠をとっぱらって、生徒個人個人が選択できることをもっと増やしていくべきです。
例えばアクティブラーニングや探求型教育が良いからと言って、どこの学校でも全員が一斉に同じことをやるのでは、せっかく新しいことをやっていても結局は先生の計画に生徒が従っていくということになってしまいますよね。
全員を留学させるにしても、様々な国の中から生徒が選べるようにしてあげたいですし、海外じゃなくて国内留学を選ぶ子がいても良いと思うんです。自分で選ぶという経験を積ませてあげるべきです。
天野:山本先生は英語以外の教科の先生と協力して、「英語と理科でSDGsを学ぶ」というように教科横断型の授業も実施されていますが、各教科で教えなければいけないことがあるなかで、どのように協力体制を作っているのですか?
山本:他教科の先生同士が一緒に授業を行うというのはすごく難しく聞こえるかもしれませんが、毎週1回2人の先生が授業行う時間を作る。みたいにして習慣化すると全然違和感はなくなりますよ。今は2教科で協力していますが、生徒の意見を聞いてみると、もう特定の教科の枠すらいらないんじゃないかと感じています。
生徒が理科の授業でたまたま興味を持った内容を様々な教科の視点で見るように促すんです。生徒が自発的に「もっとやりたい」と思うことの中には様々な教科の要素が含まれていて、結果的に多くを学ぶことになるんです。
天野:先ほどお話を聞いた生徒が目をキラキラさせながら「山本先生の授業はすごく楽しい!」と言っていたのがすべてを物語っている気がします。生徒のやる気を引き出す教えない授業の本質を垣間見れた気がします。本日はお忙しい中ありがとうございました!
取材:2019年6月13日
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