公開:2018-09-04 更新:2019/04/22
日本の就職市場は少しずつ変わってきているが、まだまだ「新卒重視」「学歴主義」が色濃く残る日本の就職事情。企業も履歴書だけでなくエントリーシートを導入するなどの変化が見られるが、日本の就職システムは世界からどう見え、今後どうなっていくのか。 私はアメリカの大学で経営情報学を専攻していた。その授業の一つで企業の人事・労務などについて学んでいた時、人材採用に関する授業があった。その中で履歴書(レジュメ)の書き方の講習があったのだが、そのとき「ダメな例」として挙げられたのが、なんと日本の履歴書だったのである。 講堂の大きなスクリーンにデカデカと日本の履歴書の画像が映し出され、先生が日本の履歴書がどれだけ無意味なのかを解説し始めたのだ。。。 英文履歴書(レジュメ)を見たことが無いひともいるだろうから、まずは日本の履歴書と英文履歴書のサンプルの画像を見ていただこう。
※英文レジュメはObjective(志望動機、自分の強み、実際の仕事経験などがメインのフォーマットになっている ※出典:https://resumegenius.com/resume-samples サンプル画像を見て、皆さんはどんな違いに気づきましたか? サンプルを見ながら皆さんにも一体何がダメだと指摘されたのかを考えて頂きたい。 答えは・・・ 1. 顔写真を貼る 2. 生年月日の記載欄がある 3. 学歴欄が大きい 4. 志望動機など自己アピール欄がほとんどない 大きくはこの4点が指摘された。 それぞれを具体的に見ていこう。 1.の顔写真、これは肌の色や見た目で判断することは人種差別にもつながるため米国ではご法度。写真があると、どうしても採用担当の主観が入るため、人道的な意味合いだけでなく、ビジネスとしても正当にその人の能力を評価するため、書類選考段階では見た目に関する情報は不要ということだ。 2.の生年月日も正当に能力で人を評価するために不要。20歳だろうが40歳だろうが企業は優秀な人材が欲しいのであって、年齢は関係ない。これは、米国では日本よりも転職が一般的で、即戦力が欲しいという事情もあって、年齢よりもすぐに貢献してくれる人材を採用する傾向が強いということにつながっている。 3.の学歴欄については、英文レジュメでも学歴を書くことがあるが、書いたとしても最終学歴と成績を書くが、過去の学歴を並べることはしない。大事なことは、学校で何を学んだか、成績はどうだったかであり、いつどの学校に行っていたかなどの情報は不用。これには、アメリカは日本よりも編入や大人になってからの学び直しが一般的ということも大きな理由だろう。例えば貧困地域で学力の低い学校で学んでいた人が、大学に入ってから一生懸命勉強して、途中からよりレベルの高い大学に編入するということもできる。 最初からその大学にいたのか編入で入ったのかは重要ではない。あくまでその人がその大学に入れたという事実と、その学校で学んだこと、収めた成績が重要なので、過去の学歴などは関係ない。 4.の自己アピールについては当然ながら「なぜその会社で働きたいのか?」「何がしたいのか?」そして「何ができるのか?」などアピールしないと企業側もわからない。 余談になるが、私自身会社を経営し、採用をするようになって痛いほどわかるが、学歴だけアピールされて「なんでもやります!」と言われても、その人がうちの会社で営業をやりたいのか経理をやりたいのか?そもそもどういう性格でどんなことが得意なのかがわからないと判断ができないということ。日本の履歴書で、例えば同じ大学出身者の履歴書がなん十通も届いた場合、顔写真くらいしか差別化できるポイントが無いのではないか?と思ってしまう。 このように、日本人としては当り前に使っていた履歴書だが、英文レジュメと比較されることで、それぞれの国の採用に対する考え方の違いが明確に見えた。この授業は私とっては衝撃的だった。 やはり学歴や同族意識(同郷や同じ学校出身者)を重視し、新卒のまっさらな人材を「会社が教育する」というスタンスの日本と、「即戦力・実力重視」のアメリカでは採用から違うということだ。 今の日本には国際社会で戦える優秀な人材が必要不可欠だ。それは、言われたことに素直に従うだけの、均質に優秀な人材ではなく、自分で考え行動できる、強い個性を持った人材だ。最近の企業が、採用にあたってエントリーシートや面接を重視するのもそのためだろう。日本の採用事情も変わりつつあるのだ。 日本の履歴書から学歴欄が消える日は近いのかも知れない。 天野智之の他の記事を読む
この記事を書いた人
「あの国で留学」編集長。 |
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