震災や災害が起こるたびに気づかされることも多い日本人の「ゆずり合い」の精神。そして国際的なスポーツ大会などでも、自主的に会場を掃除して帰る日本人の「思いやり」の行動は国際的にも評価されている素晴らしい国民性の一つだろう。
海外に行ってみるとどうだろう。
国や都市によっても程度は異なるが、災害が起きるたびに我先にと壊れたお店から商品を盗る人たち、並んでいる列の横入りなど、日本ではあまりない光景を目にすることがある。ゴミのポイ捨ても多く目につく。
だが「ゆずり合い」や「思いやり」とは違う、「正義感」が強い人たちが欧米には多くいる。
例えば私が留学から帰国して、違和感を感じていることがいくつもある。
その一つが「救急車」だ。
私が留学していた
アメリカでは、救急車の音がちょっとでも聞こえたら、救急車の姿が見えなくても全車両が歩道に寄せて止まる。
その為、救急車がどの道を通っても、スピードを緩めることも、ましてや止まる事など無く走れる。
救急車の音が聞こえても止まらなかった一般車両は今まで見たことが無い。
日本ではどうだろうか?
道路が狭いというのはあるかもしれないが、広い道でも、救急車が来て歩道に寄せて止まる車があったら、ここぞとばかりにその車を追い越していく車がある。。。
また、救急車が反対車線や別の道を通っていたら停車しないだろう。
これはアメリカ・
ニュージーランド
では絶対にありえない光景だ。救急車が見えなくてもサイレンの音が聞こえたらすぐに停車する。
人の顔が見えない時や直接利害が無い時には優しい気持ちが湧かないとでも言うのだろうか。
いわゆる「正義感」と言われるものは、欧米人のほうが強いのかもしれない。
また、私自身に子供ができて、子供や子連れに対する対応の違いも見えてきた。
私はいたって健康な30代男性ということもあり、日本で子連れで出かけても電車などで席を譲られることはない。譲られそうになったことも今のところ一度もない。
私の妻は妊娠中でも席を譲られることはほとんどなかった。しかし、私の息子が1歳の時に一緒にアメリカに行ったときには周りの対応に驚いた。地下鉄やバスに子連れで乗ると、乗客が次々と「ここに座る?」と聞いてくるのだ。彼らの親切心は「子供を抱えている=席を譲る」というようにとてもシンプルなのだ。そして「大丈夫だよ」というと「OK」と言ってそのまま自分の席に座り直す。
日本人だったらきっと子供を抱えている私を見て、「子供を抱えているけど、若いし、健康そうだし譲らなくても良いな」と、無意識のうちに席を譲る理由に対して、譲らない理由をいくつもあげるだろう。実際に日本人は、「お年寄りが乗ってきたけど元気そうだし、譲らなくても良いかな」など、無駄に気を使ってうまく譲れない人も多くいるだろう。また、譲ろうとして断られた時に居場所がなくなってそのまま違う車両に行ってしまう人も時々目にする。そのまま元居たところに座り直せば良いのにと私は思うが、それがうまくできない人が多く、そうやって空いた席はみんな遠慮してしまい、次の駅まで空席のままというのを目にすることもある。
以前、
タイに出張で行った際、現地にいる友人家族と一緒に出掛けた。
その友人は小さい子供を抱っこしていたのだが、タイ人は子供好きな人が多い。
デパートやお店に子連れで入ると、店員たちが寄ってきて「かわいい!抱っこさせて!」と子供を抱っこしてくれ「私たちが抱っこしているからゆっくり店内を見てください」と親がゆっくり買い物できるようにしてくれる。
他人に子供を抱っこされたくない人もいるだろうからこれは意見が分かれるかもしれないが、ゆっくり買い物をしたい人にとってはありがたいことだろう。
周りとの協調性や調和を大切にする日本人だからこそ、個人が目立つような正義感を出しづらいということもあるのかもしれないが、震災の教訓を忘れずに日々の生活でも「助け合い」の精神を持ち続けて欲しい。
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