【編集長ノート】英語化 vs グローバル化

公開:2018-10-16 更新:2018/11/27



 
留学経験のある私は「英語ができてグローバルでいいなー」と言われることがある。
まさにこの思考こそが日本のグローバル化にブレーキをかけている一因だと私は思っている。
 
 
私自身も留学に行く前はそうだったが、「英語さえできれば何でもできる」というような幻想を抱いたように思う。
「英語ができればコミュニケーションも上手」「英語が出来れば仕事でも活躍できる」というように、英語に対して過剰な期待を抱いている人が皆さんの周りにもいないだろうか?「あの人は海外帰りだから陽気なんだ」みたいなことを言う人もいる。
アメリカ人でも口下手な人や、他人と接することが苦手な人もいる。英語が出来るからと言って決してコミュニケーション上手だとは限らない。
それに、英語ができる人が仕事優秀だったら、英語ネイティブの国の人は全員優秀なビジネスパーソンになってしまう。そんなことはありえない。
 
なぜか感情的に「英語が出来る」=「優秀、かっこいい」みたいな方程式を植え付けられてしまっているような気がする。
これは日本の教育の中で、アメリカや欧米圏への憧れを抱かせるような事があふれているからなのだろうか?
 
 
 

英語黒板


私が中学生の時にこんなことがあった。
私の通っていた中学校にはALTの先生が毎年1名来ていた。
ある年の文化祭で、当時ALTで来ていたアメリカ人(白人)の男性講師が、文化祭の始まりの挨拶をした。その冒頭で「Ladies and Gentlemen!」とその先生が一言発した瞬間に全校生徒が「おおお!!!」と盛り上がったあの時の衝撃を今でも覚えている。
みんなが「本物だ!」「すげー!」と叫んで興奮していたが、今思うと何が「本物」なのだろう。。。
彼は英語ネイティブではあるが、司会者でも芸能人でもない一般的なアメリカ人男性だ。
しかし、テレビで見るようなセリフを英語ネイティブの人が話したということが、日本の片田舎の中学生にはとてつもなくかっこいい事のように思えたのだろう。
 
 
今後さらにグローバル化が加速する中で、英語は「憧れる」ものではなく「あたりまえ」なものになっていかなければいけない。
先ずはその意識を変えることがグローバル化への一歩に繋がるのだ。
しかし「グローバル化」という言葉に対しても幻想を抱いている人が多いように感じる。
 
「グローバル化」の定義は難しい。「グローバル化」という言葉は人それぞれ違う意味合いで捉えていて、一つの定義が存在していない。
しかし、その中で、私がもっとも日本国内で多数を占めていると思う定義は「グローバル化=海外経験」という考え方だと感じている。
 
私が海外留学をしていたことに対して「グローバルだ」と言う人が多いように、日本以外の国を知っていればグローバルだと思う人が未だに多くいるように思う。
確かに留学で学んだ事は大きい。留学中には様々な国の人たちとも触れ合う事ができた。
 
 
しかし私の留学経験だけでは全然足りないほど「世界は広い」のだ。
 
 
私の仕事柄、様々な企業から「海外」についての質問を受ける。しかし多くの質問に私一人では答える事ができない。
アメリカの事でも知らないことはたくさんあるのに、他の国の事を聞かれても知らないことは無限にある。
 
 
「日本人は海外の人と違ってレディーファーストじゃないから嫌だ」という事を言う人がたまにいるが、国や宗教によっては、欧米式のレディーファーストを良しとしていないところもある。
以前、中国人の友人から「アメリカでは女性の容姿やドレスを褒める文化があるが、中国では時と場合によってはそれは逆に失礼にあたる」と聞いた事がある。特に既婚者の女性の容姿を公然と褒める場合などは注意したほうが良いのだそうだ。国によっては宗教上の理由で肌を露出しない女性たちもいる。
多種多様な言語、宗教、文化、それら全てが集まって「グローバル」なわけであって、1つの文化や宗教がグローバル化の基準を作っているわけではないのだ。
 
ちなみに私は以前、日本に長く住んでいて日本食も普通に食べているバングラデシュ人(イスラム教)の友人と日本食の話をしていた時、彼が「豚骨ラーメンは食べたことがない」と言ったので「こんなに長く日本に住んでいるのにもったいない!」と言ったら「豚が食べられないので」と言われてハッとしたことがある。
 
 
 

グローバル


グローバル化とはどれだけ多くの文化に触れ、それらを受け入れる柔軟性を持つかだと私は考えている。
日本国内でも文化や習慣の違いがあるのだから、とにかくたくさんの人と触れ合う機会を作る事から始めるのが良いのかもしれない。

 
 
天野智之の他の記事を読む
 
 

タグ

この記事を書いた人

「あの国で留学」編集長。
15歳で単身ニュージーランドの高校へ留学。
高校卒業後に渡米、カリフォルニア州立大学で学位を取得。

Official Website:https://4tomorrow.jp/

おすすめ留学プログラム

おすすめ記事

教習所に行かないの?国によって違う、世界の運転免許取得方法

教習所に行かないの?国によって違う、世界の運転免許取得方法

あの国編集チーム

2019-12-18

世界6都市の「お酒事情」

世界6都市の「お酒事情」

あの国編集チーム

2013-04-20

学生組織(学生社交クラブ)のソロリティとフラタニティとは?

学生組織(学生社交クラブ)のソロリティとフラタニティとは?

あの国編集チーム

2019-12-09

世界5都市の「ダイエット事情」

世界5都市の「ダイエット事情」

あの国編集チーム

2013-04-24

アメリカのファストフード事情

アメリカのファストフード事情

あの国編集チーム

2013-03-04

世界6都市の「カフェ事情」

世界6都市の「カフェ事情」

あの国編集チーム

2013-04-24

おすすめ取材

~編集長インタビュー~ 代々木高等学校から始まる! 2年間の「グローバル留学コース」がスタート!

~編集長インタビュー~ 代々木高等学校から始まる! 2年間の「グローバル留学コース」がスタート!

天野智之

2019-08-29

~編集長インタビュー~ 子供たちの人生の選択肢を増やしたい!

~編集長インタビュー~ 子供たちの人生の選択肢を増やしたい!

天野智之

2019-07-30

~編集長インタビュー~ テクノロジーを使って落ちこぼれを生まない教育を

~編集長インタビュー~ テクノロジーを使って落ちこぼれを生まない教育を

あの国編集チーム

2019-07-11

~編集長インタビュー~ どこでも活躍できる人材を育てる 全員参加の必修ニュージーランド留学

~編集長インタビュー~ どこでも活躍できる人材を育てる 全員参加の必修ニュージーランド留学

天野智之

2019-06-24

~編集長インタビュー~ 未来の教員 教えない授業&1校に所属しない働き方

~編集長インタビュー~ 未来の教員 教えない授業&1校に所属しない働き方

天野智之

2019-06-18

〜編集長インタビュー〜サッカー元日本代表 “田代有三”

〜編集長インタビュー〜サッカー元日本代表 “田代有三”

天野智之

2019-04-25

ページの一番上に戻る