【編集長ノート】女性の社会進出

公開:2018-10-01 更新:2018/11/27



 
日本の経済が長年停滞している中、打開策の一つとしてもっと多くの女性に働いてもらうため、「女性活躍推進法」を作り、国としても女性の社会進出を大きく後押ししている。
よく、欧米諸国と比べて「子育て環境が整っていない」そんな議論を良く耳にする。
本当にそうだろうか?
 

例えば、少子化対策の1つとして、女性が働きやすいようにということで、育児休業の期間を3年まで可能になったが、果たして育児休業期間が延びたからという理由で女性の社会進出が進むのだろうか?
変化の速い現代において、長く休めば休むほど仕事に復帰しづらくなるだけではないだろうか?と私は思ってしまう。
 

日本で「欧米諸国」と言うとそのほとんどはアメリカが参考にされている思うが、そのアメリカはどうなっているか見てみよう。
アメリカでは「産休」はほぼ無い。生まれる直前まで働いていることがほとんど。さらに「育休」は4~8週間程度がほとんど。つまり1~2ヶ月くらいで職場復帰している。出産後も1~2日くらいで退院する。日本のように1週間近く入院することも無い。
私自身、アメリカ人の友人と話していると「日本は産休・育休期間が長くて羨ましい」と言われる。1年の育休がとれるというだけでも彼らからしたら凄く良い環境なのだ。それが3年となったらどれだけ良い環境かわかるだろう。
 

各国の出生率を見てみるとどうだろうか?
2016年時点で日本は1.44、アメリカは1.82の出生率だ。日本よりも出生率が高い。
 

つまり産休・育休の期間が長いから子供を産む人が増えるわけではない。
 

出生率

2016年時点で、先進国ではフランスの出生率が最も高く、1.92となっている。

出典:世界各国の出生率(内閣府HPより)
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/data/sekai-shusshou.html
 

内閣府の報告によると、
 

フランススウェーデンでは、出生率が1.5~1.6台まで低下した後、回復傾向となり、直近ではフランスが1.92(2016(平成28)年)、スウェーデンが1.85(2016年)となっている。これらの国の家族政策の特徴をみると、フランスでは、かつては家族手当等の経済的支援が中心であったが、1990年代以降、保育の充実へシフトし、その後さらに出産・子育てと就労に関して幅広い選択ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向で政策が進められた。スウェーデンでは、比較的早い時期から、経済的支援と併せ、保育や育児休業制度といった「両立支援」の施策が進められてきた。また、ドイツでは、依然として経済的支援が中心となっているが、近年、「両立支援」へと転換を図り、育児休業制度や保育の充実等を相次いで打ち出している。”
 

この内閣府の報告を読むと育児休業制度の充実が重要な政策の一つと見て取れるが育児休業期間の延長だけでは出生率の改善はまだ実感できているように思えない。
 
 

では保育の充実について考えてみよう。
 

アメリカでは公立の保育園というのはほとんどない。私立の保育園(デイケア)やプリスクールがメインになるが、都市部では月額15~20万円は当り前。ベビーシッターを雇えば25万円を超えることもザラだ。
日本の保育園や幼稚園よりも圧倒的に高い。給料のほとんどをデイケアやプリスクールに使っているという家庭もあるくらいだ。
 

保育料で考えると日本は既に恵まれた環境にある。そうするとやはり待機児童の問題など「預けたいのに預けられない」という問題が女性の社会進出を阻んでいる大きな理由なのだろうか?
 

いくつか他の理由についても考察してみよう。
 

統計データを見ながら女性の社会進出に関して見てみる。
 

日本では大卒女性の就業率がOECD平均に比べてかなり低いと言われている。しかし一方で男性の就業率はトップクラスだという。
少し古いデータ2014年のデータになるが、大学以上の学歴を持った日本人女性の就職率は69%。男性は92%だという。
OECD平均では、大学以上の学歴を持つ女性の就業率は80%以上ということなので、他国と比べて日本人女性の社会進出はまだまだ遅れているということだろう。
 

日本では大学を出ても、女性には就職先があまり無く、男性は就職先が多いということか?
それとも働きたい女性が少ないのか?
仮に働きたい女性が少ない場合、大学まで進学する必要は本当にあるのだろうか?
 

女性自身の働く意義については良く考えるべきだ。男性と同じように社会進出したいなら、男性と同じように働くことが求められる。
 

ちょっと視点を変えて、雇う会社側の目線で考えて見る。
 

会社が利益を出すことを優先で考えた場合、利益を出せるなら性別は関係ないだろう。
しかし、もし女性を雇うにあたって、長期間の産休・育休の制度など企業に対して負担を求められる場合、女性よりも男性のほうが雇いやすくなるというのも理解できる。
 

冒頭で紹介したように、アメリカでは産休・育休制度は日本ほど充実していない。
成果に対して報酬を支払うので、子供がいようがいまいが、ちゃんと仕事で結果を出せば良いというような合理的な思考がアメリカの制度から垣間見える。
 

女性が働きやすい環境を作ることはもちろん必要だが、女性を社会進出させたいなら、「女性を雇いやすい環境」を作るべきだし、本当の意味で男女平等に評価される環境づくりが必要になる。
 

東京医科大学が、入試において女子受験生の点数を一律原点していた問題が先日ニュースを騒がせた。そういうことがまだまだ日本では行われている事実、氷山の一角が露呈しただけだろう。育休期間を長くするとか、男性の育休を推進するのも良いが、もっと抜本的に社会構造や社会通念を改革する必要があると思う。
 

日本がグローバルな競争に勝つためには女性の力と、未来を担う子供達を優先的に考えることが必要だ。今後グローバル化が加速する中で、日本の環境もグローバルに対応すべく変えていくべきだ。
 
 
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この記事を書いた人

「あの国で留学」編集長。
15歳で単身ニュージーランドの高校へ留学。
高校卒業後に渡米、カリフォルニア州立大学で学位を取得。

Official Website:https://4tomorrow.jp/

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