~編集長対談~「インターナショナルスクールタイムズ」村田編集長と語る 国際社会への応用力を育む国際教育とは

公開:2019-02-27 更新:2019/07/30

2020年度に全国で実施される「教育改革」。

 

英語やプログラミングなど、新たに導入される科目に目を奪われがちですが、背景の1つとして見過ごしてはならないのが、ICTの発展に伴い急速に進むグローバル化です。職場のみならず学校や地域社会でも、多様な言語・文化を持つ人たちといかに交流し、協働していけるかが問われているのです。

 

そうした国際社会で成長する子どもたちに役立つ「学び」とは、どのようなものなのでしょうか。国際教育に詳しい「インターナショナルスクールタイムズ」の村田学編集長と語り合いました。

 

IST対談

 

多様性と変化に富むグローバル社会が要請する「体験的・探求的な学び」

 

天野:今年は、ゼロ高等学院に続き、インフィニティ国際学院やLoohcsなど新しい高校が国内に続々と開校しますね。

 

村田:そうですね。世界各地をめぐって生きた体験をする。経験豊かなエキスパートを交えてディスカッションを重ねる。机上の学習はITを活用して最小限かつ効率的に……といったフレキシブルな学校が増えてきました。

 

天野:この動きを、どうご覧になっていますか?

 

村田:いま、日本では「体験的・探求的な学び」が渇望されているのだなと、改めて感じます。これまで、「国際教育=英語学習」といったイメージが先行しがちでしたが、本当に必要とされているのは、英語「を」学ぶ場ではなく、英語「で」学ぶ場なんですよね。言語と経験は、本来、切り離せないものですから。

 

天野:確かに、どれだけ英単語や英文法を学んだとしても、そもそも海外で知りたいこと、やりたいことがなかったら……もったいない話です。

 

村田:弊社ではインターナショナルスクールやプリスクールを運営していますが、「英語に限らず、日本語でも体験的・探求的に学ぶ機会が欲しい」という声をよく聞きます。

 

天野:インターナショナルスクールやプリスクールを志望する動機は、英語の習得だけではないということですよね。

 

村田:テーマ学習やアクティブ・ラーニングが充実しているという理由からプリスクールを選択する日本の親御さんたちは、かなり多いと思います。

 

天野:プリスクールに関しては、国内でもずいぶん数が増えてきましたし、比較的、選択しやすくなっていますよね。単発で参加できる体験型のイベントもたくさんあります。

 

村田:一方、お子さんの月齢が上がるにつれて、そうした体験的・探求的な学びの積み重ねに、不安を感じてしまう日本の親御さんは多いように思います。

 

天野:どういうことでしょうか。

 

「体験的・探求的な学び」に馴染みがなく、戸惑う親も。

 

村田:プリスクールやインターでは、何度も繰り返し経験させて、子どもたちが自分で「法則」に気づくまで時間をかけます。肌で覚えさせるんですね。それに比べて、日本の教育では、「法則」を先に教えて、繰り返し再現させながら覚えさせることが多いと思います。

 

IST対談IST対談

 

 

天野:英語の授業も、単語や文法を覚えるのが先、という印象ですね。

 

村田:そうした日本の教育に馴染みのある人からすると、英語特有の発音やリズムを体で覚えるため、フォニックスや歌や踊りに時間をかけるプリスクールやインターの体験型授業は、「そろそろエッセイを書かせた方がいいんじゃないの?」という印象を受けるかもしれません。

 

天野:土台の築き方が違うんですよね。私はニュージーランドの高校、アメリカの大学を卒業しているのですが、数学の授業でも、日本の教育との違いを強く感じました。

 

村田:そうでしたか。

 

天野:日本では、まず数式を覚えて、問題を解いて覚えていく。与えられた答えを再現するアプローチが主流ですよね。ニュージーランドやアメリカでは、数のしくみさえ理解できていれば、答えの導き方はどんな数式を使っても良いという感じで、抽象概念の理解を重視していたように思います。

 

村田:プリスクールでも、例えば、子どもに実際ブロックを触らせながら、0と1の概念の違いを視覚的に気づかせたり、理科の実験で試行錯誤を繰り返させるといったアプローチをします。

 

IST対談IST対談

 

天野:親御さんからすると、「みんなと同じじゃなくてもいいの?」とか、「じれったいなぁ」と感じることが多々あるかもしれませんね。

 

村田:プリスクールやインターでは、体験が先です。「とりあえずやってみよう」と。何度も体験しながら「なぜ? どうして?」と考えさせて、あくまでも自分で気づかせるんです。

 

天野:土壌の育て方が違うのですね。

 

村田:そうなんです。どちらが良い悪いということではなく、アプローチの違いを理解した上で、お子さんに合った学びのスタイルを選択していくことが大切だと思います。

 

天野:日本の公教育の良さは、どのようなところにあると思いますか?

 

村田:例えば、クラス全体で一緒に学び合い、ボトムアップしていく点です。世界各国からの評価も高い協調性や連帯感は、公教育によって培われてきたものとも言えるでしょう。今日の公教育は「日本文化を背景に生活する子が日本語で学ぶ」ことを前提に体系化されたものであり、それは日本の財産の一つではないでしょうか。

 

 

世界を舞台に学べる子=自分で学びを選べる子。

 

天野:プリスクールやインターナショナルスクールで体系化されている体験的・探求的な学びと、日本の公教育に脈づく協調性や連帯感の育成。どちらも大切にしていきたいところですね。

 

村田:今後も、学びの選択肢はさらに増えていくと思いますが、いずれにしても、お子さんに「自分で選んだ」という実感を持たせてあげることが重要だと思います。

 

天野:と言いますと……

 

村田:変化の激しいグローバル社会は、行く先が不透明で見えにくく、お子さんの将来を案じて親御さんの焦りや不安も募ります。そこで、将来へのリスクヘッジとして英会話スクールや学習塾、プログラミング教室などに今から通わせておこうと。気づいたら、お子さんが習い事づくめに……というご家庭も少なくないのではないでしょうか。

 

天野:体験は幅広くさせておきたい。しかし、その中から、本当に興味のあること、続けられることをどのように絞り込んでいくのか。親としては悩ましいところですよね。

 

村田:おもちゃにしても、習い事にしても、飽きてしまったり、合う合わないがありますから、ある程度はサンクコスト(埋没投資)と捉えて、あきらめる勇気も必要かもしれません。「どうせ続かないから」といって何も与えないと、経験値は増えませんから……。たとえ数回でも、体験した事実は消えませんから、きっと将来の財産となるはずです。

 

天野:「選択の失敗も、経験の一つ」と捉える前向きさは必要ですね。

 

村田:幅広い体験の中で、子どもが何に強い関心を示すかを探りながら、自分で取捨選択させていく。みずから選んだことを継続できれば、それは大きな成功体験につながると思います。

 

天野:「体験的・探求的な学び」は、将来学びたいことを自分で選択できるようになるための、基礎づくりなのですね。

 

村田:冒頭でご紹介したような、いま新しく誕生している学校でも、学びたいことを自分で選択していく主体性や能動性が強く求められると思います。

 

天野:「体験」の積み重ねは、目には見えなくても、確かな自信を育むために重要だということがよく分かりました。本日は、貴重なお話をありがとうございました!

 

 

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