公開:2019-04-16 更新:2019/04/16
クラス全員で1年間の海外留学。3年で卒業し、脅威の大学合格実績を上げている淑徳中学高等学校。教頭の平山千晶先生に、同校の英語教育や留学制度について聞いた。
天野:淑徳中学高校は英語や留学に力を入れている学校として知られています。まず、英語教育について、特徴を教えてください。
平山:まず、英語の授業時間数ですが、週7時間あり、私立校の中でも多いほうだと思います。
そのうち英会話の授業は、ネイティブ教員による習熟度別の少人数指導。中学3年からは、生徒の希望によって、従来通りのネイティブ教員による少人数指導か、オンラインによるマンツーマン授業かを選べるようになります。オンライン授業は1対1なので最初は不安そうにしていた生徒もすぐに慣れて、どんどん積極的に話すようになっています。
天野:なぜ中学3年からオンライン英会話と導入したのでしょう。
平山:中学3年は全員、海外語学研修に参加することになっているので、英会話力を上げておくためです。海外語学研修は、従来は、オーストラリアへ1週間行っていたのですが、2019年度から、カナダまたはNZへ3カ月間滞在するプログラムが加わり、どちらか選択が可能です。
天野:3カ月はかなり長期間ですね。学校の授業が遅れる心配はないのですか?
平山:そこが中高一貫教育の強みです。まず、高校受験がないので受験勉強をしなくていい。また、一般の公立校より先取り学習を行っているので、大きく学習が遅れることはありません。3学期は帰国するので卒業式などのイベントにも間に合います。初年度となる今年もおよそ3分の1の生徒は、3カ月のプログラムを選択しています。
そのほか、全員参加ではないですが、夏休みや春休み、冬休みを利用した語学研修を行っています。春休みのスプリングキャンプは、アメリカのハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、国連本部の見学ツアーなども含むもので、よりハイレベルの語学研修を希望する生徒が参加しています。
天野:恵まれた学習環境ですね。どのような成果が出ていますか?
平山:英検では中3までに準2級、高校で2級の全員取得が目標です。GTEC(注)スコアは、では中3生の平均が442.3点。スーパー特進東大選抜(セレクト)コースの生徒に限ると532.4点です。いずれも全国平均の402.0を大きく上回っています。
天野:留学制度についてもお聞かせください。1年間の留学制度があるそうですね。
平山:はい、高校には、スーパー特進東大選抜(セレクト)コース、スーパー特進コース、特進選抜コース、そして留学コースという4つのコースがあります。留学コースの生徒は、高1の夏から1年間の海外留学を体験します。最大の特徴は、休学や留年をすることなく3年間で卒業できること。30年の実績があり、これまでに1000名の生徒が参加しています。満足度はとても高いですね。当初は1クラス40名で募集していましたが、ここ数年希望者が増えて、2019年度の新入生は2クラスに増やすことになっています。学校側としても、30年間でさまざまな事例を経験してきているので、自信を持っておススメすることができます。
天野:留学先はどのようなところですか? 現地ではどのような学習をするのですか?
平山:留学先は、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国32校。留学コースの生徒は、他のコースよりも英語の授業時間が多く週10時間。うち6時間はネイティブ教員による授業です。高1の7月~8月には日本を発ち、いきなり現地の学校に入ります。最初は授業についていけない生徒がほとんどです。それでも3カ月くらいから授業がわかるようになり、1年留学が終わるころには驚異的な成長を見せます。
天野:クラス全員が留学といっても、行く先やクラスはばらばらなんですね。いきなり現地校に放り込まれるのは、かなりハードルが高いのでは?
平山:はい、厳しいと思います。ですから、留学コースを選択する生徒には、中3の段階から面談を行い、生半可な気持ちでは難しいことを話し、覚悟をしてもらいます。英語力よりも意欲が大事です。そのためもあって、脱落する生徒はいないですね。
天野:帰国後は、大学受験の準備もしなければなりません。その点は、大丈夫なのでしょうか。
平山:本校の留学コースの強みは、高2の夏休みには帰国しているので大学入試の準備にも間に合うことです。早めに帰国した生徒のために、夏休みの国語や社会の補習も用意しています。
留学によって得た英語力はアドバンテージになりますし、小論文やプレゼンテーション力も鍛えられていますから、AO入試や推薦入試にも有利です。実際、多くの生徒が難関大学への現役合格を果たしています。もちろん、海外の大学に進学することも可能です。
早くからお子様に確実に実践力をつけたい、一生の財産となる英語力をつけたいという保護者の方にはぜひおススメしたいと思います。
留学コース2年生の生徒たちに、留学してどうだったか、留学で得たことや特徴などを聞きました!
US(オレゴン)3名、UK(ロンドン)2名、AUS(ブリスベン・GoldCoast)2名、Canada(バンクーバー)3名
「宗教観が強い人が多いことに驚きました。ホストファミリーとは毎週日曜日に教会に行きました。学校でも宗教学(聖書読解)の授業があり、宗教について今まで学んだことがなかったので、みんなが神さまについて真面目に学んでいることに驚きました」
「日本と違って、1つのスポーツだけをやるのではなく、複数のスポーツを楽しむ人が多く、いいなと思いました」
「アメリカ人は積極的でガッツがあり、挑戦の国と感じました。州が違えば気候や特色も異なり、さまざまな経験ができます」
「カナダは治安がよく、自然が豊か。そのため、自然のアクティビティも多く体験できます。野生の動物に遭遇することもあります。」
「日本に戻っても人種や異文化についてすごく意識するようになりました。日本は単一民族の国ですが、色んな文化や言語を持った人が世の中にいるということに気づけて視野が広がりました」
「多民族国家で移民がたくさんいるので、移民を受け入れる姿勢があり、個を尊重しています。そのため、外国人の私もなじみやすかったです」
「カナダ人はおおらかな人が多かったです」
「アメリカ英語とイギリス英語の違いがわかるようになりました」
「日本と同じ島国ですが、意外に多民族・多文化が共生していて驚きました」
「イギリスの食事はおいしくないというイメージがあるかもしれません。実は家庭菜園をしている家が多く、庭で採れた野菜を使って料理をしています。自然を活かして自立した生活を送っていて、すごく良い文化だと思いました」
「留学先の学校の食事は各国の食事が出る曜日もあり、ロシア料理やアジア料理など食べる事ができました」
「イギリス英語はイギリスでしか学べないので、イギリスを留学先に選んで良かったです」
「寮のルームメイトが語学の勉強をサポートしてくれたり、友達を紹介してくれたので頼りになりました」
「家も学校もすべてが広いことに驚きました。学校内にゴルフコースがあるし、サッカーやテニスコートが何面もあったり、家はほとんどが平屋の1階建てでした」
「サーフィンがしたくてオーストラリアを選び、ゴールドコーストの学校に行きました。週末にホストファミリーと一緒にサーフィンができて楽しかったです」
「クリスマスはオーストラリアの夏にあたる12月と冬にあたる6月の2回あるので、2度楽しめます」
「日本は時間にきっちりしすぎているので、ゆっくりした時間の進み方が良く感じられました」
――みなさん、異文化に接して、驚いたり、感心したり、それぞれに感じることがあったようですね。多感な高校時代にこのような経験ができるのは、とても意味のあることだと思います。この経験を活かして、将来の夢につなげてほしいと思います。ありがとうございました!
注:GTEC=ベネッセが実施しているスコア型英語4技能検定。大学入試の民間テストとしても採用されている。