ワイン・インターン生のNZ通信 vol.12

公開:2017-12-21 更新:2018/07/19

皆さんこんにちは!有泉歩美です。

 

「地元産業活性化のために、ワイン産業が盛んなニュージーランドでインターンをしてみたい!」そんな想いで踏み切った私の留学生活も、残りわずかとなりました。
半年間連載させていただいた「ワイン・インターン生のNZ通信」も、いよいよ今回が最終回となります。

 

さて最後のコラムでは、私が半年間のインターンを通してどういったことを学び、考えてきたのか、その一部をお話したいと思います。

 

そして私が感じた留学の魅力、“日本以外のことを知ることで、自分の世界もより大きく広げられる”、という気持ちを、皆さんに少しでもお伝えできたら幸いです。

 

ニュージーランドのワイン産業における“成功要因”とは何だろう?


 

始めに少しワイン産業の概要についてお話します。
世界のワイン生産国は、大きく「旧世界」と「新世界」の2つに分けらます。

 

ワインに長い歴史を持ち、いわゆるワイン定番国として知られる、フランス、イタリアのようなヨーロッパ諸国を「旧世界」と呼ぶのに対し、まだワインの歴史が浅いワイン新興国、ニュージーランド、日本、アメリカのような国々を「新世界」または「ニューワールド」と呼びます。

 

そんな新世界ワインも近年徐々に広がりを見せる中、ここ数十年で目覚ましい成長を遂げている国こそが、ニュージーランドです。
新世界の中でもさらに後発でありながら、世界的なブランドを構築し、生産量・輸出高・事業者数・評価・注目度、様々な面で右肩上がりの成長を続けています。

 

 
ニュージーランドのワイン産業、展示会

では、ニュージーランドのワイン産業におけるの“成長要因”とは何だろう?
そのヒントを探るのが、今回私の留学における一つの目的でありました。

 

特に、ワインを作って国内で消費する産業構造である日本にとって、高い販売単価で世界的にシェアを拡大しつつあるニュージーランドは、今後キャッチアップしていくべき対象であると考えたからです。

 

今回は、私が半年間のインターンで感じたニュージーランドのワイン産業における“成長要因”について、①グローバル・ブランディング、②ワイン・ツーリズム、という2つの視点から考察したいと思います。

 

①グローバル・ブランディング=品質×プロモーション


 

まず1つ目に、『グローバル・ブランディング』です。
前述したように、ニュージーランドワインは、世界的なブランド構築に成功しています。そして、私はその要因として「品質」「プロモーション」の2点に着眼しています。

 

ニュージーランドを代表するマールボロ地方のソーヴィニョン・ブランを始め、ニュージーランドでは、各生産者がその地の土壌や気候条件に合わせて、丁寧にワインを生産しています。ワイン製造業のうちおよそ9割が小規模企業で、ファミリー・ビジネス的な地域密着型の歴史的背景があり(これをブティック・ワイナリーと呼びます)、各ワイナリーがそれぞれこだわりとストーリーを持ってワインを生み出しているのが魅力です。

 

私も先日「PROVIDENCE(プロヴィダンス)」というマタカナ地方のワイナリーを訪問しましたが、オーナーのジム氏のワインに対する情熱には、非常に感銘を受けました。彼は「最高のブドウが収穫できた時しか、ワインを生産しない」と言うほどブドウに強いこだわりを持っており、そんな彼の生み出すワインは、国内外から高い評価を得ています。

 

 
ワインの説明を受けているところ
プロヴィダンスにて、ジム氏よりワインの説明を受けているところ

そういった高品質なワインが世界から評価されるのはさることながら、私はそんな良いワインを売り出してくためのプロモーションについても、大きなポイントがあると感じています。

 

私はニュージーランドに来てから、数々のワイン関連イベントに参加してきました。そこで感じたのは、一つにワインといっても様々な売り出し方の切り口があること、そしてその切り口によってターゲット層もガラリと変化し、ワインをさらに売り出していくための可能性が秘められているということです。

 

例えば、産地や品種での切り口ならば、ターゲットがワイン好きの既存ファンであると予想できるため、彼らの満足度向上に向けて、生産者とじっくり話ができるような会場作りがなされます。また、ターゲットに若者層を定めるイベントでは、食とのコラボやポップな雰囲気作り、SNSでの広報などの取り組みが印象的でした。さらに、ニュージーランドのワイン生産者団体である「New Zealand Winegrowers(ニュージーランドワイングロワーズ)」による海外イベントも積極的で、現地のマーケターを活用し、各国に合わせたイベント構成を思考する様子など、とても勉強になる一面でした。

 

 
ホークス・ベイのワインイベントに参加した
9月に参加した、ホークス・ベイのワインが集うイベント

誰に、何を、どのように売り出していくか、その基本部分が常に明確で、様々な角度からアプローチしているプロモーションこそが、ニュージーランドワインのブランドを世界的に構築する後押しとなっているのだと感じました。

 

②ワイン・ツーリズム=連携×テクノロジー


2つ目に、『ワイン・ツーリズム』です。
私が最もニュージーランドのワイン産業で面白いと感じている点は、ワインを製品としてだけでなく、それをツールとして観光業にも盛んに取り組んでいる点です。

 

 
ワイヘキ島へ向かう道
ワイン島とも呼ばれるワイヘキ島の道中

ニュージーランドのMBIE(産業改革雇用省)によると、外国人観光客のうち約25%がワイン体験を求めて、ニュージーランドを旅行していると言われています。
そして、そのワイン・ツーリズムが盛んである要因として、私は「連携」「テクノロジー」が起因していると考えました。

 

例えば日本では、ワイナリーに行こうと思い立っても、バスや電車が整備されておらず交通の便が悪かったり、宿泊しようにも近くに宿舎がなかったりするのが実情です。

 

その点ニュージーランドは、そういった面の心配は一切いりません。
交通インフラは、ワイナリーまでのバスが定期的に出ているのに加え、空港やフェリー発着所にはレンタカーやレンタルサイクルも配置されています。また宿舎に関しては、ホテルやB&Bをはじめかなりの充実度で、レストランやお土産ショップもたくさん立ち並んでいます。
つまり「ワイナリーに行こう!」と思い立った時、そこには行って、食べて、飲んで、遊んで、寝る、全てのサービスが整っているのです。

 

 
レンタルサイクルでワイナリーを訪問
私もレンタルサイクルでワイナリーを訪問しました。

もちろんこれは数々の周辺企業の連携から成り立っており、その協力によって地域全体のデスティネーション性は高まっています。

 

また、最近では「Tourism New Zealand(ニュージーランド政府観光局)」と「New Zealand Winegrowers(ニュージーランドワイングロワーズ)」の連携で、ワイン観光事業のサービス向上に向けて、オンラインツールの導入にも取り組まれています。
ビッグデータ業界内で共有し、デジタルマーケティング等に活用する。こうした先進的な取り組みに、各団体の連携でいち早く取り組んでいく姿こそが、ニュージーランドのワイン産業を牽引していく、大きな要因となっているのだと思います。

 

まとめ


 

上記は、私が実際にこの国を訪れ、現地に足を運び、多くの人と話をする中で見出した、「ニュージーランドのワイン産業における“成長要因”は?」という疑問に対する一つの答えです。
自分の経験から納得して得た意見だからこそ、深く自分の学びとして浸透し、自信を持って語ることができます。

 

「留学行きたいけど、どうしよう…」そんな2年前の自分を乗り越え、行動に移せたからこそ、私はいま、より自分の世界を広げ、物事を様々な角度から考え、感じられるようになったと思います。
そしてこの成長は、今後社会で働いていく上でも大きな財産になると自負しています。

 

 
ワイン畑と有泉さん

最後になりますが…
半年間インターン生として受け入れてくださったニュージーランドワインズ、コラム連載という貴重な機会をくださった株式会社トゥモローの皆様、その他、お仕事等で関わった全ての皆様、コラムを読んでくださった皆様、に心から御礼申し上げます。

 

本当にありがとうございました!

 

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この記事を書いた人

大学3年の時に留学を決意。
語学だけでなく海外のビジネス現場で挑戦したい考え、自ら企業へコンタクトを取るなどして、All New Zealand Wines Limitedでインターンシップ生として働くことに。企画や広報の実務経験を積んだ末、帰国後は広告会社へ就職。「海外インターンシップ」という留学のカタチを、是非皆さんにもオススメしたいです!

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