公開:2020-04-21 更新:2020/04/21
日本でインターナショナルスクールに通っていたり、高校時代に海外のサマースクールや短期留学、交換留学などを経験すると、「海外の大学に進学したい」という気持ちが出てくる高校生もいます。もしくは、日本の大学に進学する時点で既に大学生のうちに留学をしたいと決めている学生もいるのではないでしょうか。
「留学するぞ!」と夢や希望でいっぱいの本人ですが、大学留学に送りだす保護者はどのような気持ちなのでしょうか。
高校、大学と留学を経験しお子さん2人もアメリカの高校、大学へ進学させたご経験を持つ平田久子さんに、保護者として子どもを大学留学へ送り出すことについてお話をうかがいました。
大学留学が中高留学と違う大きな点は、留学する子どもの年齢が高いゆえに、自由度も高いということです。日本の大学に進学する場合もですが、大学進学を機に一人暮らしを始める人も多くいます。寮などに入らず自立した生活を送るようになります。経済的にはまだまだ親からの援助を受けている学生がほとんどですが、成人して飲酒が可能になったり、喫煙、車の運転ができるようになるなど、自由度がぐんと増します。
親から遠く離れた海外では、初めのうちはホームシックにもなりますが留学生活に慣れてくると日々の生活を謳歌する留学生がほとんどです。もちろん勉強は大変ですが、それも含め留学生活が楽しくなってきます。
時間割も毎学期、自分で必要な授業を取っていきます。そのため高校のように、朝は何時から1限目が始まり、6限目は何時に終わる。ということではなく、それぞれがそれぞれのスケジュールで行動します。欠席が続いても保護者への連絡はありません。
最近では無料通話アプリなどもあり、通話料の心配をすることなく連絡は取れますが、時差もあるため、お互いに都合のいい時間にとはなかなかいきません。そのため、「お金は足りているのかな」「授業にはついていけているのかな」「危険な目にはあっていないかな」など、日本にいる親の心配が消えることはなさそうです。
平田:高校留学の子どもたちは、さまざまな厳しいルールの中で学校生活をおくる、言わば籠の鳥といったものです。その点では送り出す保護者は安心できます。しかし大学留学の場合、たとえ学校の寮に入ったとしても男女同じ建物だったり、男子寮、女子寮と別の建物であっても行き来は自由だったり、門限や点呼がなかったりと、「ルールはどこにあるの?」という暮らし方をします。年齢的にも飲酒ができるようになりますし、高校留学の時より親の心配は高まるでしょう。学生は皆スケジュールで生活しているため、3日くらい連絡が取れない仲間がいても、誰も真剣に探さないといった事態もあり得ます。
平田さんがおっしゃるように、ルールが極めて少ない大学生活では、世話を焼いてくれる家族もいないためうっかり単位を落としてしまうことも。そうなった場合、学費がまたかかることはもちろんですが、日本の大学と違う点は、実家暮らしでない場合には滞在費がかかること。そして当然ながら、留学生活が伸びれば生活費も余計にかかります。学生の本分は勉強ですので、それが疎かにならない生活を送って欲しいものです。
日本は世界的にも安全な国です。そんな日本で育った日本人は、防犯意識が低いです。親元から離れ、門限もない生活。学校にも慣れて友達もでき、留学生活が楽しくなると現地で仲良くなった日本人同士で集まって飲み会をしたり、パブやスポーツバーへ出かけたり。もちろん現地の学生とパーティーなどへも行くでしょう。お酒が身近なものになります。アルコールで気が緩んでのトラブルには、よくよく注意しなければいけません。
飲酒ができる年齢は国によって違います。日本は成人とみなされる年齢が18歳に引き下げられましたが、飲酒できる年齢は20歳からのままです。しかし、例えばフランス、ドイツ、イギリスなど欧州の国では16歳からの飲酒が認められています(注:飲める種類や親の同伴といった制限があります)。オーストラリアは18歳、カナダは19歳から飲酒すが可能です。アメリカは州ごとにルールが異なりますが、基本的には21歳からとなっています。原則として、日本人であっても留学先の国の法律が適応されるので、オーストラリアでは18歳でも飲酒ができます。
また、禁止薬物が身近になるのも事実です。誘われても決して手を出すことのないよう、きっぱりと断るよう子どもには伝えたいものです。揺るぎない意思を持って断ることで、誘う相手を諦めさせることはまったく可能です。
無事に留学先の卒業予定がたつと、もう少し残って勉強したい、まだ社会に出たくない、と大学院について調べ始める学生もいます。子どもから「もっと勉強がしたい」と言われたら親はどう思うでしょう。
留学前から大学院まで進みたいと考えているのか、留学は大学までで、それ以降は大学院に進むのでも日本に帰国すること、などを事前に決めておくのがベストです。急に大学院進学、ましてや海外の大学院に行きたいと言われても親は戸惑ってしまいます。経済的な援助が難しい場合には、きちんとそれを伝えて帰国して就職するように促す必要があります。
そうはいっても、留学してもっと勉強や研究をしたいと思うようになった子どもを応援したいのが親ですよね。では、大学院留学にかかる費用はいくらくらいなのでしょう。公立か私立かによってその費用は異なりますが、費用の目安として1年間の授業料を見てみましょう。
アメリカ:私立300〜500万円 州立200〜300万円
イギリス:150〜200万円(イギリスの大学院は通常1年間)
カナダ:私立80〜180万円 州立40〜120万円
オーストラリア:私立220〜600万円(2校のみ) 州立200〜250万円
※他に滞在費や教科書代、生活費、海外保険料や航空券代などが必要になります。
※有名なビジネススクールのMBAコースなどでは、卒業までに1千万円程度かかる学校も多くあります。
就職については、専攻が文系か理系かにもよりますが、研究職やコンサルティング、メーカーで商品開発をするなど、修士や博士を取得した方が有利な分野もあります。
なぜ海外の大学院へ進みたいのか、また日本の大学院ではいけないのかを、親子でしっかりと話し合い、納得してから進学させたいものですね。
交換留学で1年間大学留学をする場合は違ってきますが、海外の大学を卒業する留学の場合、親も子供も「もしかしたら将来はそのまま現地で就職したりして・・・」と考えるのではないでしょうか。それは決して可能性がない話ではありません。しかし、非常に難しいと考えておきましょう。
まず海外で働くためには就労ビザが必要です。そのビザの申請には雇用先が必要ですが、申請には費用も手間も時間もかかるため、よほど欲しい人材でない限り就労許可を持っていない外国人を雇ってはくれないのです。
将来海外で働きたいという希望で留学するのであれば、しっかりと英語力を身につけ、日本に帰り海外拠点が多くある企業や海外出張が頻繁にある企業などに就職するのが望ましいです。そのような企業で社会の基礎を学ぶことで、将来の展開を目指すのが最も現実的な策です。
留学生を対象とした就職フェアなどに参加して、英語力のある学生を欲しい企業に自分をアピールするとよいです。
平田:残念ながら、外国で正規に就職することは結構難しいです。学士の新卒は特にそうでしょう。希望する国で学ぶということは実現可能ですが、希望する国で働くということは別だということを、子どもにしっかり理解させておくことは大切です。
高校から海外へ留学し、そのまま大学も海外で進学すると、自分は日本がホームなのだという事実に違和感を感じ始める子が大勢います。でも、どれだけアメリカなりイギリスやオーストラリアに馴染んでも、そこはアウェーでしかないということを理解しなければいけません。留学生は自分が属する学校の留学生枠で暮らしているだけで、一般社会の面倒や負の部分を担うことはほぼなく、その国の「いいとこどり」をしているのです。現地の人も、留学生をそのような目で見ています。
留学先で素晴らしい経験をしていている子どもに「やっぱりこの国はすごいね」「日本ではこんな経験できないね」など、親が肯定的な意見を述べることは良いことですが、留学先は日本より優れた国とばかり、無条件に称賛し続けてしまうと、子どもは帰国することが嫌になってしまう、敗北に感じてしまう、といった感情が芽生えかねません。それは、子どもにとってひどくかわいそうなことです。
卒業後は帰国するとの道筋を子どもにきちんと把握させることは、極めて重要です。
平田さんがおっしゃる通り、送り出した親は子どもに学生のうちはしっかりと留学先で学び、さまざまな経験をし、楽しんで欲しい。そして就職の第一歩は日本だよと、初めから伝えておけば、気持ちも方針も固まり、メリハリもつき、子どもは集中して取り組むことができますね。
高校留学でもそうですが、送り出す親が出発前の子どもに伝えられることは限られています。留学先の子に「きちんと暮らしているか」と繰り返し問いただすことがプラスに働くケースもあるでしょうが、応援しているよ、信じているよ、という思いを送り続けることが、子どもに安定した留学生活を全うさせるための最初のステップではないでしょうか。
平田久子さん
東京生まれ。義務教育を日本で、高校・大学教育をアメリカで受ける。帰国後はアフリカにて、難民対象のボランティア活動に従事。日本での専業主婦の日々を経て、日本語と英語で伝統芸能の著述や講演の企画運営を行っていたが、近年は日本人の英語学習についての発信をメインの活動に据えている。著書に「改訂新版子どもをインターナショナルスクールに入れたいと思ったときに読む本」(2019年コスモピア株式会社)「留学を考え始めた親と子が読む本」(2020年同)。
この記事を書いた人
「あの国で留学」の編集チームは全員が留学経験者。留学会社に勤務し実際に留学を希望する人のカウンセリングを行ったメンバーもいます。留学へ行きたいと希望する人の気持ちもわかり、実際に行った経験からどんな情報があったらいいかも熟知しています。留学を希望するすべての方に役立つ情報を発信していきます! |
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