【ビザ情報】オーストラリア就労ビザ 大幅改正による影響

公開:2018-11-21 更新:2018/11/21


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はじめに


アメリカトランプ政権発足以降、世界的に自国民保護主義の傾向が強まり、オーストラリアも 「オーストラリア・ファースト」として2017年4月18日に突然ターンブル元首相が移民政策を翌日から改正したことで、主に日系企業をはじめとして、就労ビザ取得希望の方には昨年から多大な影響を受け、多くの方が翻弄される事態となりました。今までに経験のない1年がかりの「4段階」改正を受けて、2018年3月18日より今までの457ビザからTSS(482)ビザとしてあらたに就労ビザが施行されました。

 

この改正の最大のポイントは「オーストラリア国籍・永住者の雇用第一」主義として、海外からの人材は厳密に、中長期的か、短期的な職業として区別し、特に、短期的職業は労働市場において、一時的と認定し、永住ビザへの道が遮断されたことです。これは、これから留学を検討している皆さんにとっても非常に重大な改正であり、職種によっては永住への検討は不可能となりました。加えて、もう1つ若い方にとって厳しい要件は「関連した職務経験が2年以上あること」という要件ができたことです。つまり、今までは、大学卒業直後、新卒であり、職務経験がない場合でも雇用主からのオファーがあれば比較的就労ビザ取得は可能でありましたが、この要件ができたことにより、必然的に、卒業直後に就労ビザ申請は難しくなりました。オーストラリアは学部卒業後には「Temporary Graduate Visa(485)」を取得可能となりますので、このビザで2年以上職務経験を最低積む事で、その後ようやく就労ビザ申請が可能、となります。

 

2011年に世界中の留学市場を検討しても、卒業後「2年間」の猶予あるこのビザが施行されたことは画期的ではありましたが、時代は、保護主義傾向となり、状況は厳しいものへと激変しました。

研修ファンドの施行


さらに、オーストラリア政府は、オーストラリア国籍・永住者若手人材の雇用を後押しする為、初期4年で15億ドルの研修ファンドを設立し、人材育成へあてる事を決定しました。つまり、オーストラリアの新卒学生はスキルがありませんので、この層への手厚い研修ファンドを設立することで、雇用創出・雇用増大へつなげる方針です。

 

この資金は教育省が管理し、分配していく予定です。ファンドの原資として、就労ビザ取得予定者=つまり海外からの人材を受け入れる企業(スポンサー)がこの費用(Levy)を負担し、政府が徴収するという要件を設定しました。その為、支払者はこの費用の恩恵を受ける権利はなく、考え方としては雇用主(スポンサー企業)が寄付に近い構図となります。

費用の負担額は?



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ではどのくらいの費用を支払う必要があるのでしょうか。

 














年間売上高 年間費用
1000万ドル以上 1800ドル
1000万ドル以下 1200ドル


 

スポンサー企業の売上規模に準じて、年間費用が異なります。オーストラリア就労ビザ申請手順は
①スポンサーシップ(会社の審査)②ノミネーション(職種の審査)③ビザ(申請者の審査)と3段階ありますが、この研修ファンドは②ノミネーション申請時に、赴任予定期間分合計して、一括で支払いが必要となります。元来、オーストラリアの申請料金は他国に比較してもかなり高額になっている為、現実として、赴任者1名派遣を検討する上でも、この法改正により大幅なコスト増になりました。

 

そのため、留学後に就労を検討する皆様にとって最大のポイントは、スポンサーがこの研修ファンド費用を理解した上でオファーを提示くださるか、という点かと思います。雇用主の立場になると、オーストラリア国籍・永住者(現地採用)を本当に採用できない場合に、この就労ビザを検討する形になると思います。これらの背景を理解した上でのキャリア設計は重要であり、現実的な状況をふまえて、留学を検討していただければと思います。

 

事例として雇用主の売上が1000万ドル以上で、Accountant(中長期的な職業)を4年間派遣予定する場合、ビザ取得に関わる政府に支払う費用は以下となります。

 






















スポンサーシップ 420ドル
ノミネーション 330ドル
研修ファンド 1,800x4年=7200ドル
ビザ  2,455ドル(主申請者)
合計 10,405ドル


 

永住への道として検討できるのは「中長期的な職業」のみとなり、かつ、就労ビザで3年以上勤務後、同じ雇用主が永住としてのスポンサーとして合意頂いた際に可能となります。457の時には2年後に可能であった永住ビザ申請も3年後へと変更となりました。

おわりに


オーストラリアへの留学を検討する皆様にとって、その後のキャリアを検討することは非常に大切なことであり、学部を選択する上でも様々な角度から検討することになると思います。移民国家による政策は常に経済や政治情勢に連動している点からどうしても先が読めない政策ではありますが、グローバルな環境における就学はどんな世界に飛び込んだとしてもきっと有益な経験になると思いますので、ぜひ目標をもち、そして将来を検討していただければと思います。オーストラリアの強みはやはり「アジアパシフィック」に位置する事です。世界情勢をみてもこれから確実に発展するのはこの地域であり、アジアへのpathwayとしてオーストラリアにおける就学は多様な国からの留学生とともに過ごし、違う考え方を吸収する最高の環境といえます。ぜひチャレンジ精神をもってよい留学にしてほしいと願います。

 
 

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この記事を書いた人

AOM Visa Consulting代表。
慶応義塾大学法学部卒業、テンプル大学法科大学院ジャパンキャンパス Pre-LLM修了。
オーストラリア移民法を20年以上取り扱う豊富な経験をもち、うち9年は在日オーストラリア大使館内務省(Department of Home Affairs)にてシニアイミグレーションオフィサーとして従事。日本で受理するビザクラス全般(観光・学生・就労・一時居住・永住ビザ)の審査官として実務経験を積む。

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