【国内でグローバル教育】子供をインターナショナルスクールで学ばせるということ

公開:2020-03-02 更新:2020/03/02

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親になると、自分よりも子ども中心の生活になります。心配もつきませんが、期待も膨らみ、その成長を見守ることに大きな喜びを感じるものです。幼いうちからさまざまな習い事でその子の可能性を広げてあげたいと、きっと子ども本人よりも真剣に将来を考えるのではないでしょうか。

「将来英語で困らないように」と考える人も多いはず。そんな中、日本でも英会話教室やネイティブのいる放課後クラブなど、子供を対象とした英語教育スクールが増えてきています。しかし、さらにしっかりとした英語環境で子どもを学ばせたい場合、インターナショナルスクールを検討するのではないでしょうか。

自分の子どもをインターナショナルスクールへ入学させたい場合、子どもにあった学校はどこなのか、どのような準備が必要でいつから始めたらよいのか。両親のどちらかが、もしくは親戚などでインターナショナルスクールへ通った人がいれば別ですが、そうではない場合には、分からないことだらけです。

高校、大学と留学を経験しお子さん2人をインターナショナルスクールで学ばせ、その後アメリカの高校、大学へ進学させたご経験を持つ平田久子さんに、保護者として子どもをインターナショナルスクールで学ばせることについてお話をうかがいました。

インターナショナルスクールに向いている子どもは?

平田:留学もそうですが、インターナショナルスクールは日本の学校に通うこととは異なる、特殊な環境です。日頃から日本人以外との関わりがあったり英会話に触れていなければ、スクールでの生活が始まったときにその環境の変化に大きく戸惑ってしまうでしょう。そのため、いい意味で鈍いというか、あまり物怖じしない子どもの方が向いていると思います。特殊な環境でいろいろなことに一喜一憂したり、神経質になってしまう子どもは、なかなか難しいかもしれません。

幼稚園からインターナショナルスクールに通うか、小学校からかで多少の違いはありますが、幼い子どもにとってその環境の変化は刺激にあふれています。しかしそれは言い方を変えると、大きなストレスにもなります。ストレスを感じつつも、それを良い刺激と捉え、スクールを楽しむことができれば問題ないと思います。

親の情熱がいくらあっても、実際に学校へ通い学ぶのは子どもです。多少の英語力と図太さを持ち合わせているのが望ましい、と申します。

早いうちに始めたほうが有利とは言い切れない

子どもの脳はスポンジのようにさまざまなことを吸収すると言われます。そのため早いうちから習い事をさせる親も多いです。特に英会話に関しては、脳科学的に証明されている「子どものほうが音に関する感性が高い」という点から「L」と「R」が聞き分けられる「英語脳(耳)」を育てるためにも早い段階で習わせる傾向にあるようです。小学校からインターナショナルスクールで学ぶ場合、既に幼稚部から通学している子や前から英会話を習っている子どもと、全く学んでいない子では、差が出るのでしょうか。

平田:インターナショナルスクールに限らず、幼児教室などで早くから英会話を学び始めている子どもはいます。そういった子どもと小学校入学時に英語に初めて触れた子どもが一緒になると、英語に馴染みのない子は、「なぜ自分だけが分からないの?」と戸惑ったり、がっかりしたりしてしまいます。それはちょっと可哀想ですね。

早い方がいいというのは、多少なりともあるでしょう。しかし、だから有利かと言えば、そうとも言いきれません。遅れをとっている子が、インターナショナルスクール入学時に、「なぜみんなは分かっているの?どうして私・僕はわからないの?」と感じるのは当然です。とはいえ、幼い子どもの吸収力は抜群ですから、教師や親がしっかりフォローすれば、幼少時では子どもの間で大きな差があったとしても、数年後にはその差はなくなっていることがほとんどです。

秀でた才能を伸ばすカリキュラム

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インターナショナルスクールは小学校から高校までのトータル年数は同じですが、多くの場合、小学校6年間、中学校2年間、高校4年間になります。また「小学○年生」「中学○年生」「高校○年生」という呼び方はせず小学校1年生をGrade 1と呼び高校3年生をGrade 12と通しで学年を数えます。例えば中学2年生はGrade 8になります。

小学校にあたるGrade6までは英語、算数、理科、社会、音楽、図工、体育(学校によっては国語、生活)などの基礎学習を主に学びますが、中学にあたるGrade7もしくは高校にあたるGrade9からは、ほとんどの場合、基礎学習を除く教科は選択できるシステムになります。学校により教科は違いますが、音楽、コンピューター、演劇、歴史、バンド、心理学など好きな授業を選ぶことができます。飛び級を認める学校もあります。個性を認め得意なことはどんどん伸ばしていこうという考えです。反対に、苦手な教科はレベルを下げたり、留年や、退学を促すこともあります。

授業は全て英語で行うところと、国語と日本学習以外の教科は英語で行うところなどさまざまです。英語で授業を受けることに対して、日本人の子どもは抵抗などないのでしょうか。

平田:抵抗を感じてしまう子はどうしてもいます。日本に住む英語ネイティブの子どもがインターナショナルスクールで学ぶのは、ごく自然な行為です。しかし、日本に住むスウェーデン人には、スウェーデン語で通える学校はありません。そうなるとスウェーデン人の子どもは英語で学校生活を送ることに納得がいきます。しかし日本の子どもの場合、日本に住んでいながらなぜ英語で学ばなければいけないのか、なぜこんな苦労をしなければいけないのかという疑問が生じます。そこで、それでも学校は楽しいし、友人にも恵まれている、だから英語でも頑張ろうと思えれば問題ありません。

一方で、日本語であればもっと理解が早いのになぜわざわざ英語でやらなければいけないの?こんな環境は迷惑だと思ってしまうと、続けることが困難になります。その時に親からいくら「将来役に立つよ」「あなたの為だから」という言葉をかけられても、「そうなんだ、だったら頑張ろう」とはいきません。

学校外で日本式の塾にも通いつつ普段の授業では英語で学ぶことを苦労とは思わない子ども、苦労しつつもなんとかやってのける子ども、どうにもうまくいかない子ども、とさまざまです。

通わせる保護者の英語力について

子どもを英語が話せるように、多様な文化の中で成長させたいと思いインターナショナルスクールに入学させる親たち。では、彼らには英語力が必要なのでしょうか。それは学校によって違ってくるようです。

平田:アメリカンスクールは、学校の配布物などもすべて英語です。古くからある老舗のインターナショナルスクールもその傾向にあります。しかし、日本人を国際人に育てましょうという創立理念の学校や、日本語、日本文化も学びつつ欧米式の教育もしていこうという学校は、必ずしも英語力は必要ありません。配布物も日本語と英語両方が用意され、学校の掲示も2ヶ国語でされています。学校によって保護者の英語力についてはさまざまです。この点は学校を選ぶ際のポイントになるかもしれません。

転出転入は比較的多い

小学生になる、中学生になる、高校生になる。進学して新しい生活が始まることは、頭では分かっていても実際に始まってみなければ分からないことが多いものです。日本語で行われない授業や多国籍のクラスメイト、また日本の学校に通う同級生とは違うカリキュラムで学ぶインターナショナルスクール生の場合には戸惑いも多いでしょう。では、どうにも子どもに環境が合わず転校を考えた場合には、どのような選択があるのでしょうか。

日本の公立の小学校、中学校への転校は問題ありません。しかし私立への場合には改めて入試があります。インターナショナルスクールは特殊な学校なので、外国籍の生徒の場合、親の日本での赴任期間が終わったので帰国する、または日本人でも海外転勤になり引っ越すということも起こります。反対に海外赴任が終わって日本に戻ってきた帰国子女などは、英語環境の方が長い場合にはインターナショナルスクールの方がスムーズに学べる環境になるため、年度の途中で転入してくる生徒もいます。

平田:日本の公立、私立校への転出以外にも、インターナショナルスクール間の転出転入もあります。その子にあっていなかったり、通学が負担だったりしてより家に近いスクールへ移りたい場合、そこに空きがあり且つ編入試験に合格すれば転入できます。また、高校まであるインターナショナルスクールは、中学までしかないスクールから高校に入ってくる生徒を受け入れるための枠を設けています。

途中で退学との選択肢も持っておく。子どもの幸せを第一に

平田:インターナショナルスクールでは、慣らし保育や体験学習といった機会はほぼ望めません。頑張って入学してもスクールの雰囲気に馴染めない、授業についていけないなどの理由で在籍し続けることが難しくなる生徒はどうしても出てきます。そのような時には考えを切り替えて、子どもにとって何が一番良いのかを親が示してあげなければいけません。

「この学校にいるのは辛くてたまらない」といった深刻な状況に陥ると、子どもはチック症が出たり慢性的に体調を崩したり、とサインを出します。それらを見落とすことなく見つけ認めるのは親の責務です。大概の場合、このような子どもは日本の学校に転校させれば落ち着きますから、そうさせれば良いのです。

インターナショナルスクールをやめることは挫折ではありません。親も子も、退学することに敗北感や劣等感を持つ必要もありません。入学時にはその子にベストだと思って入れたインターナショナルスクールでも、無理が生じて前進できなくなったのなら方向転換することが最も大切です。日本の学校に転校させる際には、インターナショナルスクールでの生活も楽しかったよね、とポジティブな思い出を持たせてやれば、子どもは健やかに成長して行けるでしょう。

親の見栄や世間体よりも、子どもの心を守るのが親の勤めです。大切な子どもの未来がかかっているのですから。

 

お話をうかがった方

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平田久子さん
東京生まれ。義務教育を日本で、高校・大学教育をアメリカで受ける。帰国後はアフリカにて、難民対象のボランティア活動に従事。日本での専業主婦の日々を経て、日本語と英語で伝統芸能の著述や講演の企画運営を行っていたが、近年は日本人の英語学習についての発信をメインの活動に据えている。著書に「改訂新版子どもをインターナショナルスクールに入れたいと思ったときに読む本」(2019年コスモピア株式会社)「留学を考え始めた親と子が読む本」(2020年同)。

この記事を書いた人

「あの国で留学」の編集チームは全員が留学経験者。留学会社に勤務し実際に留学を希望する人のカウンセリングを行ったメンバーもいます。留学へ行きたいと希望する人の気持ちもわかり、実際に行った経験からどんな情報があったらいいかも熟知しています。留学を希望するすべての方に役立つ情報を発信していきます!

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